どこまでも広く暗いその中、ただ一つ、異彩を放つまでに輝く青。青い星。
船はそこから、ゆっくりと離れていく。
プロテクターとの最終決戦、その代償はあまりにも大きく、疲弊した組織は一時の撤退を余儀なくされた。
手痛いものであった。
幾人もの怪人が消え、作戦が崩れ、苦い報告を繰り返した。
しかし、離れゆく地球を背にする幹部の姿、それはどこか洋々としていた。
そう、収穫がなかったわけではない。
「はなっせ…!離しや…が…れ、この…!」
小さくなる青い星を捉えながら、男が野太い声で叫ぶ。
叫ぶ。しかし、それだけ。何も出来はしない。
腕も脚も、体の自由は完全に奪われている。
磔になったその姿は、一種異様なものであった。
力瘤を蓄え、上腕二頭筋を強調する形。筋肉を誇示するような、逞しい上半身。
股は大きく開き、しかし膝は曲がり、どっしりとした脚が真っ直ぐに地に向かっている。
厳しい姿だ。太い体を余すことなく見せつけるような、ポージングのような格好。
しかしそれも、誰かに強制され、宙に浮いたままでは、却って滑稽な姿だった。
「こんな…格好…、くそぉ…ぉ!」
涙ながらに訴え吠えるが、その姿にもどこか覇気がない。
辺り一面、密閉された室内には、プロテクターを弱らせる、あの匂が充満していた。
守るべき地球を前にして、股間を熱くさせている。その屈辱を味わい、プロテクターが喉から唸る。
「貴様には随分世話になったものだ」
指が鍵盤でも叩くように、優雅に動いてスーツに触れる。
八の字に開いた股の付け根、突き破りそうな程に勃った股間が摩れる。
「あ、やめ…触、ん…な……!」
骨を折る事にはなった、しかし、だからこそ価値がある。
この男の力にも。この体にも。スーツにも。
「たっぷりと、解析させてもらうか。感謝しろ、貴様の力は全て、これから我ら組織のものとして活かされる事になる」
「く、…ころ……へぇ…っ!」
舌の回らぬ口で、悔し涙と共に声を出す。
目覚めた時には既に、舌を噛み切る事もできなくなっていた。
容易に自害も出来ない。ただただ、悔しさと快楽の中で、嬲りものになる運命しか残されてはいない。
しかし、最期まで抵抗は見せてやろう。意地でも、だ。
その意思で、黒仮面を睨みつける。
「そんな目が出来るのも、今のうちだ…。今までは所詮遊びに過ぎん…」
脅している。
そんな口調ではない。囚われの身に対して、脅しなど意味がない。
それより更に、恐ろしいもの。ごく当然、真実を語る口調だ。
「だが、もうそれもおわりだ。ここに連れてきた以上、な」
組織の宇宙船にして、そのアジト。そこは、組織の技術の粋を上げて作られたものだ。荒野とは違う。規模も、機材も。加えて、この宇宙空間では誰の邪魔も入らない。
「ゆっくりと、狂え」
声と共に、密閉された空間は大きく様変わりをした。
磔台の背後からは、多量の細い糸のようなものが這って出る。
プロテクターの耳を、背をなぞって伸び、巨躯の至る所に絡む。その細い糸のような触手の先端、そこには吸盤のようなパッドが付いている。
体の前からは、多数の異形の者どもが現れる。
戦闘員も、怪人も、皆まるで違う手に、一様にグローブを填めていた。
「な、なんだ、こいつらはっ!?」
マズいと。戦士の本能がそう告げる。
この態度、この機材、どれも、何か恐ろしいものを抱えた者たちの姿だ。
「は、はなせ!おれを…離さんかぁっ!」
声の限り叫び、吠える。しかしそれに響いたのは、金属の音のみだ。腕と足の拘束は緩まず。敢えて固定されていない腰だけが、前後に無様に揺れただけだ。
「やれ」
「が、ああぁ、ああぁあアアアッッ!!」
糸が、手が。
全身を隈無く 舐め上げる。
脂肪の一握りさえも逃がさず、筋肉組織の一本すら捉える。
ガチムチの体が痺れ、分厚い舌が口から飛び出る。唾液が飛散する。
情けなく開いたままの股の間、玉袋の下も、肛門の周りも、触ることすら恥ずかしいような場所まで、全てが犯される。
羞恥に震え、逃げようとしても、動くのは性器のぶら下がった股間だけだ。
揺らせば揺らす程、無様に、そして快楽を増す事しか出来ない。
「お、おぉお…はっ、ハッ…ん」
射精る。イク。
羞恥心や、プライドが、口の食いしばりになって顔面にシワを作る。
しかし、それでも、体が快楽に勝てるわけもない。
込み上げる快楽、その絶頂を味わう為に、腰が突き出た。
その直後。
ふっと、体中に感じていた振動が止んだ。
あとひと擦り。それだけで達することが出来る。その目前でプッツリと。
「何だその顔は、物足りない、とでも言いたいのか?正義のヒーロー様が」
「バ……野郎ッ…、俺はそんな…こと…」
「そうか、ならば好都合だろう。安心しろ」
「な、が…ヒぃ、いっ、いぃイイ…!」
触手の先端、そこから来る微弱な振動が、崖っぷちのプロテクターの背中を押す。しかしやはりまた、寸前で止められる。
「その先端からは、貴様のデータを随時取り入れている。射精の寸前で止まるように、いつでもコントロールができるというわけだ」
「そん…な、ぁぁああぁ、あひぃ、ひっ…ぃぃ」
じゃあなんのために、こんな変態じみたこと。
疑問も声に出せないまま、プロテクターの四角い顎からは、再び喘ぎのみが溢れて出た。
イク寸前まで追い詰められ、突き放される。精液が尿道手前まで込み上げ、しかしそこで戻される。何度も何度も。気が狂いそうな快楽の中、一度足りとも開放されない。
「へ、…ヘッ…ぇぇ…、はひ、…う、ぐぅぅ」
壊れるような甘い声は、いつしか小さな呻きのみに姿を変えた。
もう声も出ない。太い体を見せつけるポーズのまま、力無く膝が折れ、大きな尻が垂れる。勃起し続けの股間からは、止めどなく先走りが溢れ出る。触られる度、糸まで引く。
しかしどんなに脱力しても、触られれば覚えたての十代のように、体が跳ねて涎が飛ぶ。
それ程にまで、追い詰められる。
何故、何故。こんな。あの時はあんなに…。
「ああ…、いや…だぁ…、こんな…。…やめろ…、ちくしょ……、ぉおぉぉ…」
答えは見つけられないまま、孤立無援となった太い体が、腰を揺らして啼き続ける。
いやだ。
その言葉が、己の中の黒い欲求に染まりつつあるのにも気づかずに。
どれくらい経っただろうか。
朝も夜もない空間で、ただ同じことの繰り返し。
目覚めている時は、一刻の自由もない快楽責め。
しかしその責めも、快楽の最も高まる瞬間、一歩手前まで追いつめては、引き離される。
「あ゛ーっ、あ゛ー、はぁ、あ゛ーっ…」
いつしか、食いしばっていた上下の歯は開き、ぽかりと空いた口からは低く抜けた声ばかりがこぼれ出る。
目は虚ろになり、宙を覗いて惚けている。
口から垂れる涎は既に糸ではなく、一本の線にまでなっていた。だらだらと、お預けをくらった犬のように、後から後から溢れて出る。その足元、垂らした汗と涎と先走りが、水溜りすら作っている。そこから強烈に香る雄の匂。それが、プロテクター自身の鼻を、脳を絡めて犯す。
鍛え上げられた体は、困難や苦痛に立ち向かい、その度に強く逞しくなっていった。
窮地を救ってきたその学習能力が、今は仇となっている。
繰り返される刺激に、乳首も股間もとびきり敏感なものへ、いやらしい身体へと変貌させられていた。
スーツ越し、ペニスを握られれば、あっという間に絶頂まで辿り着いてしまう。
乳首を捏ねられれば、体に電流が走る。
とろけそうな快楽が、握られ、触られるだけで内から湧いて出る。
それでも、達しそうな瞬間には、波が引くように快楽が去り、痛みと苦痛で熱を冷まされる。
イキてえ、イキたい、出したい。
だめだ、だめだ、俺は正義の…。
心に思う言葉。
それも、繰り返す度、後者の声が小さくなっていく。
「お、い…イ…き…あぁ、ぁああおいお」
いきたいいきたい。
口から出かけて、また飲み込む。そんな事を、数え切れない回数こなした。
「久しいな、プロテクター」
虚空を見ていた目が、声に叩かれ光を灯す。黒い姿、憎い敵の形を捉え、淀んだで瞳でそれを睨む。しかし、その威嚇する顔も、どこかだらしがない。
久しい、その言葉で、随分と時が経った事に初めて気がつく。
時間の感覚も、正常な思考も失って、随分と経つ。
「どうだ、我々に協力する気になったか」
その言葉には、弱々しく首を横に振る。もう言葉での返答も出来ない。
あと一歩。ヒーローとしての意地すらも、もう残り僅か。
そんな様子が手にとるように見透かされる。
面白そうに、黒仮面の顔がぐっしょり濡れた股間に向かう。
「しかし、そのスーツ、…邪魔ではないのか…?」
邪魔。
じゃま。
ジャマ。
何を言っているんだ。一瞬その表情が浮かぶが、だがそれも一瞬。すぐに、プロテクターの顔もまた、濡れそぼった己の股間を覗いた。もう、この程度は羞恥にすら思えないようだ。
「お、オレ…は…、これで、お前らを…」
「まだ倒す、などと考えているのか」
愉快だと。馬鹿にしたように黒仮面が嗤い言う。
「しかし、そのスーツがなければ、さぞ極上の快楽が得られるだろうなぁ」
その言葉に、返事はない。
嘗ての誇り高きヒーローならば、馬鹿な話だと、一笑しただろう。一瞬の間、それが開く時点で既に、彼は変わってしまっていた。
「だ、だまれ…」
「達することが、出来るかもしれんぞ…」
「そん、そんな…、あ、はぅ…おぉぉ…」
時間が来た。
触手達が、怪人達が、戦闘員達が、プロテクターへの愛撫を再開する。
過ぎて毒となった快楽が、プロテクターの体を襲う。思考を壊す。
底のない快楽の嵐。心を犯す、気持ちの良さ。
いきたいんじゃねえのか。ええ。
どうなんだよ、素直になれよ。体はこんなにおツユ垂らしてるぜ。
どうせ誰も助けになんか来ねえんだ、狂っちまえよ。
ゴツイ体カクつかせやがって。ええ、ヒーローさんよ。
耳元で囁かれる誘いが、淫らな甘言が、プロテクターの霜降りの体に染み込んでいく。
勃起した根元から扱き上げられ、尻が門の手前で擦られる。腹が絞られ、胸を愛撫される。腋を掻き回され、耳すら犯される。
きもちいきもちいきもちい。
たりなり、もっともっと、いきたい。これが、もっと。
きもちいい、すげえ、もっと、もっと。
…そうすれば、きっと。
「あ、ひっ、そこ、スゲ…え」
渋い声が上ずって、一言。漏れたように、己の中の快楽を認めた。その時だった、
「あ!?あひぃ、ひん、おひっ…ぃいいい!?」
快楽が電流のように、肉の芯まで駆け抜けた。
ペニスが溶けてしまいそうな、脳までとろけそうな、心を壊す快楽。
それはある種の錯覚であり、同時に錯覚ではなかった
「あ、あ…ヒッ…なん…」
プロテクターが股間を見ると、そこはピッチりとした光沢のスーツの姿はなかった。ドロドロと、とろける快楽に呼応するように、スーツは溶けて形をなくしていた。
スーツだった。それは、スーツだったもの、だった。
紫色のゲル状に、股間部分だけが変質している。
長い間、決して晒されなかった部位が、ぴくぴくと。寸止めの繰り返しで充血しきったペニスが、先端だけ顔を出している。
「あ、ああ…、ハヒッ…、そんな…ばか…ナ。コ、これ…、は、こん…な」
スーツの着脱は、プロテクターの意思のよってのみ統括される。プロテクターが命じれば、半永久的に、それが脱げる事はない。
それがこうして、性器だけを剥き出しにしている。
望んでいるのだ。がちぶとの体の奥、滾る雄の本能が、ヒーローの殻を破ろうとしている。
「ち、違う…こんな、俺は…正義の…、こんな」
『お前らなんぞに、地球を好き勝手にはさせねぇぞ!』
とろとろと、留まることなく壊れていく。
「ああ、すげ…、すげ、気持ち…あ、駄目だ、やめ…、おお、おぉおぉぉ」
『どうした…えぇ…。こんなもんでっ…止めるつもりだったのかッ、俺を!』
剥き出しになる性器が、白い湯気まで出して臭いを立てる。
「俺、あ、俺、悪を…あ、あ、チンポ…ヒーロー…の、あ、チンポ…、くせ…あ」
『負けねぇぞ…、負けるわけにゃ…いかねぇんだ!』
プロテクターの表情が、涎を垂らして崩れていく。
「いや、だ。いやだいやだ、やべろ、…あ゛あ゛ぁ、気持ち゛い……おはぁああ」
『俺は…、俺は…イキ…たいもっと』
「あ゛あ゛ぁぁぁー!、は、はやぐ…!、もっど、シゴいてくれええ、俺のチンポ、チンポ気持ちよぐしてくれよぉおお!!」
その雄叫びは、プロテクターの心が、正義の闘志が、快楽に敗れた宣言。
正義のヒーローが、肉奴隷にまで堕ちた瞬間だった。
「ガハハ、ついに堕ちやがったぁ!」
周りからは、歓声のように声が上がる。
「あああ。あひ、ひぃん、きもっちい゛、たまんねェええ、たまんねェよぉおお!」
雄の声を上げながら、伸びた無精髭が似合う、男らしい顔が、絶望に歪み、そして壊れる。
頬が膨らみ、太い喉が歓喜に震える。快楽を享受する。
「くっせえな、酷ぇ臭いダ!」
スーツの中、垂れ落ちるまで溢れた先走りが。開放されて湯気にまでなる。
ぷんと、締まった空間に、プロテクターの鼻に、芳香が届く。
プロテクターを苦しめていたあの匂いに、どこまでも似た臭いが。
全身をピッチりと包むスーツの中、ただ一箇所だけ、それも選りに選って股間を剥き出しにして。
でっぷりした肉厚な体を、見せつけるようなポージングで固定させた姿。
その姿は、最早ヒーローでもなんでもない。変態と、そう呼ぶに値するものだった。
「をぉぉぉ、イク、イグ!チンポからデル、お゛はあぁああああ!」
一度の崩壊した頭には、もうどこにもブレーキはない。
直の刺激に耐えられず、懐かしい開放の味を卑猥な言葉で堪能する。
びゅくびゅくと、大量の白い精液が、紫のスーツに斑点を作っていく。
射精の官能の度、腰を突き出す度、スーツがビリビリと悲鳴を上げる。
脇、乳首、尻、内腿と。
性感の強い部位が選んで裂け、スーツを変態的なシルエットに変えていく。
堕落に見合った、変態ヒーローの誕生だった。
いつしか拘束も解かれたが、しかし逃げようとする様子も見せない。
それどころか、新しく露出した部位を怪人の手に渡すように、淫乱な格好で太い股を自ら開く。
「もっと、もっとさわっで、さわっでくでええええぇ!」
知ってしまった。この快楽を。
そこにはもう、嘗ての逞しいヒーローはいなかった。
雄の快楽に負けた、がちぶとの男が一人。
狂乱の中、あひん、あひ、と、あられもない声だけが、いつまでも続いた。
「どうだ、プロテクター、久しぶりの地球は」
「はい、とても…懐かしいです…」
この船に乗った時と同じ、青い星を目の前にして、二人で並ぶ。
黒仮面の姿は何も変わらず、真っ直ぐに立っている。
しかしその横、プロテクターの表情は、立ち振る舞いから何から、全てが変貌していた。
「おぉ、おっ……、ひ」
犬のお座りのように座し。デカイ尻を左右に振っている。
股間はいきり勃ち。上からも下からも汁を垂らしている。
股の間に挟んだ太い腕が、肛門周りを弄り回している。
「ひっ、ひひ…、あひん…」
全身を包むスーツ。ガッチリとした背中。太ましい体。低い声色。
それらは何も変わることなく、ヒーローとしての原型を留めている。それだけに、その姿は異常であり、卑猥だった。
「忙しない奴だ。もう我慢がきかんのか」
「あぁ、はい…、申し訳…ございません…。お、おれはぁ…」
「どうした」
「早く、…はひ、皆に見て欲しいッス、…お、俺の、俺の…」
太い眉を下げ、鼻水と涎でベトベトにしながら、口が開く。
「へ、変態…ヒーローの、どすけべな格好を…、もっとお…」
闘っていた時の、険しさも逞しもない。
苦しみも、恐れもない。
残っているのは、ただ快楽だけ。
そんな顔で、腰を突き出した。
「幸せそうな顔になったな」
「は、はい幸せ…です。おふ…チンポもケツも…おん、気持ちよくて、あぁ…、最高ッス」
ガクガクと下半身を揺らしながら、黒仮面に満面の笑みを返す。
「み、皆をもっと、お、オオ、…幸せに、して欲しいッス…」
「ははは、流石ヒーローだな。変態になった後も、市民の幸せを考えるとは」
狂った笑顔で、壊れた心で、快楽漬けの頭で、それでも市民の幸せを願う。
そんな淫乱戦士プロテクターを、褒めてやる。
「褒美だ、射精しろ」
「ああ、ありがき、おぉ…ぉ、幸せ…!い、イぐぅ!イぎま゛ず!」
血と涙を流し、苦しみ抜いたヒーローは、もういない。
精液と汗を垂らし、悦びを心から感じ、ヒーローは股を大きく開いた。
でっぷりとした股間から一筋、青い、青い星に向け、精液が放物線を描いた。
完
- 2010/04/28(水) 04:20:24|
- 【ヒーロー】|
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