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肉体装甲 プロテクター

入り組んだ雑木林の木々の間に、紫色の煙が駆けていく。

地を這う虫は逃げる間もなく動きを止め、鳥は枝を揺れにも厭わず逃げていく。木々の間を駆け回る動物達は、みな一様にその恐ろしさから逃げ回った。

「ケヒャヒャ、どうだ、新兵器の神経毒のお味はぁ!」
煙に似た紫色の、歪な化物が嬉しそうに笑う。
ガスの噴出口と思しき穴を幾つも持つ、二足歩行の煙のようなその姿。怪人、そうとしか呼べず、また、それが正しいであろう風貌だ。

「くくッ、いかなお前でも、この怪人の毒には適うまい…」
その化物の背後、顔に光る黒塗りの仮面以外は、人形に近い男が穏やかに喋る。立体ホログラムを使い、遥か遠方より指令を出すその静かな声には、威圧するような低い憤りが込められていた。
「さあ、今日が貴様の命日だ…、プロテクター!」
その静かな声から一転。何度となく、辛酸と共に吐き出した名前を叫ぶように口にした。
「イッー!」
その叫びを号令と捉え、動けぬ敵に止めを刺そうと怪人が脚を踏み出した。
その時だった。

「ゲヒャアァア!」
悲鳴は、煙の外から上がった。
もうもうと巻上がっていた煙の一端、そこが割れたように舞っている。そこから飛び出した濃い紫色の巨大な影が、怪人の体を貫いていた。

「ガハハ、悪ぃなぁ…!」
渋く低い中年の声が、バイザーの下、剥き出しの口から発せられた。太すぎる喉のせいか、荒々しすぎるその発声のせいか、落ち着いた印象はまるでない。
肉食獣を思わせる、その無骨な四肢を折り曲げ、さらに深く拳を沈めていく。
「この程度の煙じゃあ、目くらましにもならねぇよ」
「プ、プロテクターッ、貴様ァ!?」
怪人の悲鳴に呼応し、周りを囲う戦闘員達が一斉に腕を振りかぶり襲いかかった。
大の大人を吹き飛ばす、それだけの威力の戦闘員の拳は一つとして外れず、全てが紫色の光沢を放つ厳しい体ぶち当たった。
「ぅぉおおらあああ!!」
しかし、その分厚い体はひるみもしなかった。
腕を引き抜き、野獣のような声を上げ、熊の思わせる巨体を振り回す。ただそれだけで、拳を埋め込んでいた戦闘員達が無残に吹き飛ぶ。


大地を穿つ巨大な足が、それに繋がったむちむちとした太ももが、力瘤のように固く膨らむ。その筋肉の脈動が見えた戦闘員は、次の瞬間風と一緒にくたに宙を待っていた。
「おっせぇぞ!」
ズシン、と大地を震わして、大きく開いた股が落ちる。降りた先、狼狽えたままでいる戦闘員達を睨むと、休むことなく千切るように薙ぎ倒した。
「どうしたぁ!卑怯な手に頼らなけりゃ、こんなもんしかねぇのか!」
一騎当千、まさにその言葉通りの力。言葉通りの肉体。

「クソォ、プロテクターめ!くらえぇえエエ!」
腹に穴を開けられ、致命傷に程近いダメージをおった怪人が叫ぶ。その体中、穴という穴から発した高熱のガスが、紫色のピッチリ体に張り付いたスーツを取り囲んだ。
最期の一手、その凶悪の赤色が、焼けつくような執念が、四角い顔を歪ませるに至った。
「ぐっ…がぁあああ」
「ケヒャヒャ、焼け死ねぇええ」
この闘いが始まってより、ついに訪れたこのチャンス。逃がすまいとして、怪人がよりガスを強く吹き付ける。僅かに露出した部分、その顎から汗が滴り落ちる。スーツ越しに、太ましい体の震えが見える。

しかし、その時間も長くは続かなかった。

「ぐ…、うぉおぉおお!この程度のねつぅぅう!」
「な、ナニィ!?」
腹の張った胴体に大きく息を溜め、ガスを至近距離で吸い込むことも厭わず、巨体が凄まじい気迫を共にして突進を仕掛けた。怪人へと駆け抜ける体が、瞬間的に爆発する。全身の紫色がさらに輝き、脂肪分のたっぷり乗った筋肉質な肉体をありありと照らし出す。
「くらえぇええエエ!!」
膨大な筋力と、凄まじい速さと、重量級の体とを全て使う、単純にして強靭、そのタックルが怪人の体を貫いた。

「ギ…、ゲギャアアァアアア!!」
決着は一瞬だった。
怪人は林中に届くような断末魔の叫びを上げ、轟音と共にその体を爆発、四散させた。
熱と、風圧が、雑木林の間を駆け、木々をざわつかせた。

風がやんだ頃には、怪人の吐き出したガスも、戦闘員も、ホログラムとして見ていた幹部もいなくなっていた。
「ハァ…はぁ…。ケ、さっさと逃げおおせやがったか…畜生め」
さすがに疲労の色があるが、二本の足でしっかと立ち上がり悪態をつく。
「いつでも来やがれ!お前らなんぞに、地球を好き勝手にはさせねぇぞ!」
そして、見えない敵に向かい、大声を張り上げ宣言した。
指まで太い手を腰に充てがい、巨大な尻から伸びる足をピンと立たせ、見事な勝利の仁王立ち。

荒々しく、美しくもない。
しかし行動と言動、そしてその強さは、紛れも無いヒーローそのものであった。
そう、紛れもなく、彼こそが地球を守るヒーロー、「プロテクター」であった。




「おのれ…忌々しい…プロテクターめ…」
薄暗い宇宙船の中、仮面の男が呻くように言った。どす黒い感情を隠すことなく、憎々しげにモニターに向かっている。
『どうしたぁ!卑怯な手に頼らなけりゃ、こんなもんしかねぇのか!』
画面の向こう側では、つい先日の闘いの映像が流れていた。あの時の、あの敗北の光景が。

ヒーロー、その名はいつしか組織によって「プロテクター」の名で呼称されるようになっていた。
武装と呼べるものは一切持たず、それどころか、体を覆うものはピッチリとした光沢のスーツが一枚。ベルトやブーツといった装飾品のようなものは見えるが、それらを武器のようにした事は一度も無い。
そんな丸腰のような男。その程度、組織は当初歯牙にも掛けなかった。

しかし組織の予想に反し、そのヒーローの強さは凄まじいものだった。
容易に片付くと思われた地球侵略は、このたった一人のヒーローの出現により、甚大な遅延をきたす事になったのだ。

画面の奥、紫の光が乱反射しスーツが躍動した。轟音が鳴り、粉塵が辺りに巻き上がる。
その煙の中、配下の者達が音たて消えていく。
『お前らなんぞに、地球を好き勝手にはさせねぇぞ!』
全てが終わり晴れた後。四角く厳ついシルエット、ヒーローの姿、ただそれだけが画面に残った。

「どうすれば、ヤツを倒せる…」
表情の見えない姿で、焦りと動揺とを露にする。長い指を絡め合い、仮面の前で手を組んだ。
組織の幹部がこれだけの動揺を見せたのは、これが初めてだった。
それも無理のないことだ。遅々として進まない侵略計画に対し、つい今しがた、宣告されたのだ。撤退命令を。

この程度の惑星を断念するなど、組織にとって屈辱の極みである。
この程度、あの邪魔者さえいなければ労せず手中に収められる筈だ。
詰みの一歩手前、その一歩に対する、唯一の障害。プロテクター。

撤退までの時間は僅かといえ、まだあった。
戦力の補充、作戦の立案、それらの問題を考えると、時間にしてあと一戦。

それは、事実上の最終決戦。最大戦力の衝突を意味していた。

「…、全ての戦闘員と怪人を目覚めさせよ、これより我らはD-7形態をとる」
「イーッ!」
その宣告は、黒仮面に苦渋の色を浮かべさせた。だからこそ、と、組んだ手を強く握り締める。
宣告したからには、必ずヤツを堕としてみせる。
プロテクターを、奴を。必ず。


「ぐぅうおおおお!りゃあぁああ!」
土石の転がる荒野の中、闘いは熾烈を極めた。
プロテクターは強靭であったが、それでも、数の力、最期の力を投下してきた組織は強力だった。
プロテクター一人を執拗に狙い、戦闘員が拳を振るい、怪人達が猛攻をしかける。
大量の敵に、たった一人で対抗する限界。この最終決戦は、それをとうに超えていた。

「どうした…えぇ…。こんなもんでっ…止めるつもりだったのかッ、俺を!」
「随分、息が上がっているようだが」
「てめぇら…程じゃあねえよ…!」
足をフラつかせながらも、固く結んだ両の拳は決して解かない。両端に引き結んだ口を、決して緩めない。

『プロテクター』
その名の由来である、全身を鎧のように覆う肉体が軋む。
筋肉の逞しさと、脂肪の柔軟さ、その両方を絶妙な配分で併せ持ち、そしてそれを徹底的に重ねたような太さ。その肉体一つ一つに溜め込まれた、膨大なエネルギー。それを消費しながら、ただ殴る。
馬鹿らしいほどに、シンプルな闘法。
しかし、シンプルであるからこそ、その力を打ち崩すのは困難なのだ。
生半な攻撃を受け付けず、傷を負ったとしても肉体には底なしの回復力が備わっている。

単純な力押しで勝てないと分かってからは、組織は毒や神経兵器を多用した。しかし、プロテクターのスーツの効力だろう、先日の新兵器ですら意に介さぬという姿であった。
神経毒、催涙ガス、催眠ガス。この決戦でもあらゆる毒物が投下されたが、どれも効果を示すに至っていない。

押されている、プロテクターの姿を見ればそう思うが、しかし事態は組織の敗北に向かっていた。

「ハァ…ハァ…、…っらぁ!…まだ…まだァ!」
「一斉にかかれ、隙を窺い畳み掛けろ!」
それを成しているのは、ただ一つ。
ヒーローの不断の精神力。
悪を憎む心であった。

「負けねぇぞ…、負けるわけにゃ…いかねぇんだ!」
力強く、力み勇んで猛々しく吠える。
「てめぇら悪人どもには、何があっても!!」
自らを奮い立たせるため、叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
鉄球のような拳は怪人の体を砕き、丸太のような腕は戦闘員の一団を散らす。
巨大な尻が力み脚が唸ると、大地を裂いて石を飛ばした。

そんな時だった。
勝負の転機は、本当に何の前触れもなくやって来た。
自らを奮い立たせるため、常より饒舌であった事が、ただそれだけが、

「ク…ソ、それにしても、なんだ!さっきから…この臭いは…ッ」

そのたった一言が、プロテクターの運命を変えてしまうとは、今この時は誰も気がつかなかった。
ただ一人、黒仮面を除いては。




むずく感じる鼻の下を掻き、口から深く息を吐く。
全身に密着したスーツの中、毛穴に感じる汗の流れ。
発汗の冷却作用がスーツの中を素早く回るが、闘士の体は冷えた端から熱していく。

集中。
豪快にして単純そうなプロテクターの闘法は、しかし、この二文字を戦闘中絶えず頭に浮かべていた。
これがなければ、鍛え上げた肉体一つで闘うプロテクターは容易にその力を失ってしまう。
目前の敵の攻撃に、周囲の状況に、己の体に、常に意識を張ってこそ、初めてその太い肉体からはパワーが生み出される。
どんなに傷つけられようと、窮地に陥ろうと、それは決して変わらず、揺るがなかった。

「はぁ…はっ…、はァ…」
それが今、始めて乱れ、壊れ、失われようとしていた。

「臭いだ」
意識していたからだろうか。
小さな声は、プロテクターの耳に響くように入った。盛り上がった肩が、ぴくりと跳ねる。
「な、なん…てめ…」
「人間の男の戦意を削ぐ臭いだ、それをここ一帯に撒け」
静かな声の理由は、勝利の香りを感じ取ったからだろうか。誇らしげに辺りに響いた。
プロテクターの太い眉の間には、深く皺が現れた。

「かしこまりまシタ!」
その命を聞いて、奥に立っていた怪人が声高らかに進み出た。多数のフィンのような突起が全身につき、刺のようになっている怪人の姿。そのフィンのそれぞれがバラバラに動き、音も色もなく、ただ空気を撫でている。
一見何もしていなさそうなこの怪人が、この一帯に、とりわけプロテクターの周囲に臭いを巻いている元凶だった。
さして特異な能力も持たず、致命的な毒の生産も出来ない。組織の役立たずと思われた怪人が、嬉しそうに体の異物を動かした。

「なん、なんだ、畜生!?」
効果は、呆気ないほどに簡単に表れた。
プロテクターは露出した四角い顎を食いしばり、不快そうに顔を歪めている。
闘いに集中せねば。
その使命感からだろう。
なんだ、そう叫んだはずのプロテクターは、前言を打ち消すように黙りこくって両の拳を強く握った。

「どうしたプロテクター、様子がおかしいようだが」
「うるせぇ!どうしたテメぇら!かかってこんか!」
己を昂らせるための、今までの怒声とは明らかに違う。その切羽詰ったような挑発には、何かを誤魔化す色が濃く見えた。
「いやいや、どうにも本調子じゃないようだからな、待ってやろうというのだよ」
「な、なにっ!くそ…!」
気がつけば、その言葉通り、先までの猛攻が嘘のように、怪人も戦闘員もプロテクターから距離を置いている。
しかし、誰一人とせず視線は外さず、取り囲むような視線の束が、プロテクターの肉厚なスーツに突き刺さっている。
視線の円の中、光沢のあるパンパンに張った脚を小さくにじる。今までに見せたことの消極的な動きで、腰を落とす。
「どうした、プロテクター…腰など引いて」
「…ぅ…ぐ、うう…」

戦力を削ぐその臭い、それは、プロテクターの逞しい雄の体から解析したものだった。濃厚なホルモンを生み出していそうなその体、絶倫な精力を思わせるその下半身。それらを鑑み撒いたものは、同種の雌を感じさせる臭い。濃縮された精液の臭い。
今、決戦の荒野が、プロテクターにとっては最中の布団のように感じるのだ。

「おや、妙だな。貴様、武器は使わない主義だと思っていたが、隠し武器でも持っていたのか」
黒仮面の指差した先、そこには盛り上がったプロテクターのスーツがあった。
鈍く光るそのスーツの素材は、肉体の盛り上がりを一層雄々しく見せるものだ。鍛え上げた二の腕も、よく張った腹も、巨大な尻も。
そして何より、隆起した股間すらも。
「ハハハッ、これは驚いた、随分大型の武器のようだな」
黒仮面に釣られるようにして、取り囲んだ戦闘員達が笑い声を上げる。
悪の一団に指され笑われ囃立られるそこは、プロテクターの正義の心を裏切り、惨めな程逞しく勃起し続ける。
「だ、黙れ!そんなことは……っ!」
言葉ではそう否定しても、そのピクピクと固くなるチンポも、湧き上がる羞恥心も誤魔化し切れるものではなかった。
右手は懸命に握り拳を残しているが、左手はそこを隠すように覆いかぶさる。

無敵と思われたプロテクトスーツの欠点。弱点。
それは、毒、外敵、ダメージといった、『敵意ある攻撃』と認識したものでなければ防げないという所にあったのだ。
臭い、とりわけ、この匂いは心地の良いものだ。必死にスーツに呼びかけても、鼻腔に入り込むこの臭いはどんどん強くなり、脳を犯してくる。

「この闘いの中だというのに…、まさか発情しているのか…。とんだ変態がいたものだな、これがヒーローとはなぁ」
「う、うるせえ!貴様らが妙な…、クソォォォオ!」

これ以上の辱めは受けまいと、プロテクターは雄叫びを上げ、意を決し自ら攻め込んだ。
力強く肉体を膨らませ、取り囲んでいた一団の一角に拳を叩き込む。
しかし、その闘い方に普段のキレは見られなかった。

たかが臭い、されど臭い。
五感の一つを握られ、男の本能を弄られ、プロテクターは著しく集中を欠いていた。
それに加え、体の最奥から湧き上がる邪な心。
股間を包むスーツとの、微妙な振動。
それらが合わさり、昂って、動けば動くほどにプロテクターの肉体は情欲の炎に焼かれていった。

宙を飛べば、ブルンとチンポが嬉しげに弾み。
脚で駆ければ、きつく締まった尻側のスーツが、谷間深くまで食い込んで。
ズッシリとした足技を使おうものなら、まるで卑猥な部分を見せつけるような変態的な痴態にも見えた。

闘争本能を働かせれば、働かせるほど。ヒーローは無様な格好を晒し続けるのだ。
「クソ…く…くそぉ…!」
喉奥から太い声を上げながら、プロテクターは羞恥心と正義の心の間で、狂いそうな程揺れ動いていた。
その厳つい声を裏切って、ヒーローのチンポは何かを期待するようにヒクついていた。




「ハッ…、ハァっ……ハァ…」
荒く乱れた息遣いが、雄の匂いと混じり合い、大きな口から小さく漏れる。
口内では、拠り所をなくした舌が忙しなく動き。喉奥へと、唾がねっとり飲み込まれる。

この闘いは正義のヒーローとして、負けてはならない一戦。体の望みは、越えてはならない一線だ。
何度も何度も、そうして自分に言い聞かせる。
逞しい体から湧き上がる自信。
ヒーロースーツに身を包んだ自覚。
正義の味方としての尊厳。
「馬鹿野郎…、しっかり…しやがれ…」
それらで必死に、自分を抑える。スーツの中、先走りまで漏らしだしたペニスを、抑える。

そんな葛藤の中、
「ぬ…ぐぉおっ!?」
それは、一瞬の出来事だった。

正義感と、羞恥心と、むず痒い快感と。
それらの精神の揺れはそのまま、地面を踏みしめる足に響き、プロテクターに隙を生んだ。その乱れが逃されるわけもなく、気がつけば、プロテクターの巨体は空を仰いでいた。
「しまった…、これ…はッ!?」
黒仮面の腕から伸びる鞭が、吹き飛ばされるプロテクターの目に写った。
それに足を取られ、空高くへと投げ飛ばされる。
「ぐ、…ぅおぉ!」
虚を突かれ、ひっくり返った声が上がる。
情けなく股を開き、巨大な尻から地面に叩きつけられる。ズシンと、地面が悲鳴を上げた。
堪える程のダメージではない。そう思って立ち上がろうと、した。
「て、てめぇ…やりやがった……、…なっ!?」
晴れた視界に写ったモノに、プロテクターが目を見開いた。そこには、投げ出されて生まれた隙を突き近づいた、件の怪人の姿があった。
「ま、…まず…い…!」
「ケヒヒ…くらぇえっ!」
プロテクターの四角い顔の間近、怪人が嗤い、叫んだ。
「…あ、が……がぁあああ…!」
それはもう、臭いと呼ぶには醜悪過ぎた。脳を直接捕まれ、揺さぶられ、支配されるような強烈な臭気。
幻覚さえ見える、その強烈な芳香に、逞しい四肢が痙攣する。
「ぐ…が…ぁぁ…が…が…」
顔からは垂らすものを全て垂らし、目は宙を泳ぎ、眉間に鋭く皺が浮かぶ。
太い腰は弓なりにしなり、尻が地面を抉るように畝る。
防御本能だろうか、股と両肩は縮こまり、腹を向けた犬のようにみっともない格好で、ヒーローは倒れた。
丁度、盛りのついたそれのように、股間の一物だけを、びくびくと震わして。

「あ…ォ…ぉお…、…く、くそぉ…」
プロテクターの目が光を宿した時には、手遅れだった。
放り出された四肢には、いつの間にか戦闘員達が群がり、ガッシリと掴んでいる。
腕も脚も真っ直ぐに引き伸ばされ、空に向けて水平に、大の字に広げられていた。
「あ…あ…が…っ、は…離せ…き、貴様ら…この…くそ…」
「だったら、振り解けば良かろう。いつものようにな」
「ぐ…ぐぅ…ぬぐおおお」
その挑発を受け、プロテクターが太ましい肉体をさらに怒らせる。
腕の力瘤が膨らみ、太ももが逞しく怒張する。ギリギリと軋む音さえ聞こえそうに、肉体が強く歪む。
「が…ぐ…ぐおおお、ちっく…しょ…!」
しかし、ヒーローの肉体は正直で、残酷であった。いかに力強さを求めても、欲情で欠けた精神に力は乗らない。
少なく露出した部位からは、力みで絞られた汗がポタポタと乾いた土に落ちた。
くそ、くそ、と、不甲斐ない己の体と、卑劣な敵を同時に罵る。出来たのは、そのくらいであった。
「くそぉ!汚ぇ手…でっ、触んなっ…!」
常ならば、戦闘員などものの数ではない。しかし、いかに凄んでみせても、体の芯からは湧き上がるのは堕落した欲望ばかりだ。いかに怒ろうとも、熱に浮かされた筋肉は、弱々しい律動をするのみだ。
「が…がぁ!クソ…!」
「くっはは、どうやら、元気なのはソコだけのようだな」
指さされたソコ、プロテクトスーツの股間だけ。ただそこだけが、虚しくそそり勃っている。

「は…はぁ…ハァ…!」
「いいザマだな」
開かれた太い股の間、いつの間にそこにいた表情の見えない顔が嘲笑う。
静かに腕を伸ばすと、そこから伸びるように鞭が垂れた。
「ふっ…!」
その腕がしなり、風を切り、胸と腹へと叩きつけられる。パンパンに張った体を太鼓代わりにして、高く鋭い音が辺りに響いた。

「………ぐ…う」
やはり、な。
確信を持って、黒仮面が頷いた。
歯を食いしばるプロテクターの姿は、屈辱にまみれてこそいるが、痛みを味わっているようには見えない。
痛みでは駄目だ。このスーツは、苦痛と判断したものを頑に防ごうとする。

残念だ。しかし、だからこそ面白い。
「な…何だ!何しやがる…!?」
先とは打って変わって、ゆっくりと、柔らかに、鞭がプロテクターのピンと張った胸に垂れた。
ナメクジが這うように、ねっとりとした動きでスーツを舐めていく。ピッチリとしたスーツ越しに、盛り上がった胸、パンパンに張った腹、そして、もっこりと膨らんだ股間をなぞっていく。

な、なんだ…。
そう声に出そうと、プロテクターが口を開いた瞬間だった。
「が…、んっはぁ…ぁああアッん!」
その口から、悲鳴にも似た喘ぎ声がこぼれ出た。

スーツを伝い、全身の筋肉と脂肪が激しく揺さぶられている。掻き回されている。
「あ…ぇ、あえ……ぇ!?」
ガクガクと痙攣する太い首を曲げ、振動の元、弱く垂れた鞭を見る。
それは、ガチガチになった一物を捉え、小刻みに振動していた。
黒仮面の意思で自在に動くそれは、肉を裂くでもなく。肌を焼くでもなく。ただ、小刻みに震えているだけだ。
だが、その微細な刺激で、プロテクターを上げた事もない声で叫ばせた。

「あ、ががが……やえっ…ぉおおおお…」
雄の声。それは、ヒーローのものではない、雄の声だった。
「どうした、抵抗したらどうだ」
口から唾を、泡を吐き出し、むっちりとした尻を振って身を捩る。
そんなヒーローの野太い雄叫びをバックに、悠々と黒仮面が喋る。
「そもそも、やめて欲しいのならば防御すればいいだろう、そのスーツでなぁ」
「あア…ッ、あう!あうあ…ぁ…」
その通りだ。
打撃は勿論、毒や銃弾すら、意志次第で防御できる。そんなプロテクトスーツで身を包んでいるのだ。身を守ろうと思えば、こんな程度の『攻撃』ならば労せず防ぐことができる。
「…それとも、気持ちよくてたまらんと、もっとして欲しいと、そういう訳か…」
「ちが…ああ!おぉ、おっおっぉっお…ん」
スーツの中、振動を受ける男根がさらに大きくなる。汁を垂らす。
生地越しに感じる刺激をもっと受けようと、誘うように体積を増していく。
勃ち上がった亀頭にも、根元にも、受ける振動が気持ちいい。

違う、何を考えてるんだ…。

「が…くぅ…、こんな……ぐぐ…!」
いつまでも、こんな嬌声を上げてたまるかと、男の意地を働かせた。溺れそうになる心を叱り、歯をキツく食いしばり、目に涙を浮かべて声を堪える。
プロテクターの周りには、丸く囲んだ怪人や戦闘員の目が、ギラギラといやらしく光っていた。その光は一様に、ぐちょぐちょとうねるプロテクターの股間に集まっている。
「み゛る…なぁ…ぁあぁ゛!」
怒りの声も、喘ぎ混じりのいやらしいものだった。
その事実に、軋む音が聞こえそうな程、口を引き締める。
悔しくてたまらない。
心からそう思っているのに、その食いしばった口からは、涎が一筋、糸となって地に垂れた。



乾いた大地に、ひとつ、ふたつ。
涎と汗が、雫になって影を作る。
「あ゛…ぁあ…あ゛ぉぉ……」
そのねっとりとした涎以上に濃厚な粘液が、後から後から溢れ出る。
ぴんと張った先端、太くなだらかなボディラインの中、ただ一箇所不自然に盛り上がった股間から。
どろりとした液体は、ただただスーツの中で絡まり、濡れる。
濃密な先走りが増えれば、増えるほど。
プロテクターの局部は、喜びに震え。
悪の与える快楽に媚びるように、ブルンと大きく弾んでみせる。
「ぐぐッ…う!…うぅう……ンッッ!!」
身をよじり、声を殺す。
自らの出す粘液でさらに増しゆく快楽に、次第に体がおかしくなる。
声を耐える事すら、困難になっていく。
しかしそれでも、ガッチリと鍛えられた肉体の奥、燃える闘志で己を自制する。

「ソコッ!…あ…、…やめろぉぉ…」
ついに股間だけでは飽き足らず、腹へ胸へと鞭が伸びる。
ぴんと張った胸、ぷっくりとした乳首を舐めるように、縛るように。みちみちと、鞭が油の乗った体を、快楽が正義の心を、縛り上げる。
「ははは、豚料理、だったか。貴様らの言うそれに、よく似ているなあ、貴様」
「ぐお…お…ぉ、がっ…、はなぜぇっえええ…!」
今まで組織を苦しめてきた精神力は、流石と言える。ここまで追い込まれていながら、なお屈しない。
しかし、既に遅い。
その逞しい精神は、自らの苦しみを長引かせるだけだ。ならば、いっそ。

「…どれ、サービスしてやろう」
顎で指図され、奥で控えていた怪人が歩み出る。
フィンを再び唸らせ、今度はプロテクターの鼻先間近、ゼロ距離にまで体を迫らせる。
「テメエはっ、ま、まさか、ヤメ…!?」
視界を覆う忌々しい姿に、プロテクターが四肢を縛られながら、動かない体で足掻いた。
「やめ!やめろおっ!やめろ、やめろ、やめろやめろぉぉお!」
「素直に、なれ」
音も色もない、甘い芳香がプロテクターの鼻腔に直接叩き込まれた。
「ひ…、あ、が…ぁああぁッッ!!!…あああっ!…あぁ、………ぁぁぁ…はぁ…」
鼻を突き抜け、脳へと刺さる。
その匂い。

プロテクターの悲鳴は、今までとはまるで違う、コントラストのある声だった。
悲鳴のような声は、僅かに一時流れたのみ。太く厳つい声は弱々しく曲がり、飲み込まれるようにして、静かな吐息へと変わっていった。甘く弱々しい、いやらしいものに。
必死の抵抗を繰り返し、険しさを失わなかった目つきが、鋭い眉が、顔の皺が、その時、どろんと、堕ちた。

「ようやく、素直になったか」
「あ…、ぉおぉ…、ぉん、はん……」
どこか虚空を見ながら、プロテクターが初めて「喘ぎ」を口にした。
正義の味方の闘志を、男としての意地を、意識を遠くに置き去りにされ。取り除かれ。
むっちりとした下半身の、そのままに。男の欲情のままの声を上げる。あられもない姿を、晒す。

これは幻だと分かっていても、その錯覚に心がついていかない。ついていけない。
いかに崇高な正義の心を持っていても、状況を理解する力がなければ、心は燃えない。

「は…ぁ、はぁ、あ、ひぃ…ん…」
どんな姿を夢見ているのか、体が淫らに動き出した。
四方に磔にされた体、そのただ一箇所だけ動く腰。それを前後に振り始める。
「はは…はぁ、あぁあぁああ…」
その声は、悲しいほど官能的だった。
「ナンだ、ナンだ、一皮剥けばヒーローっても、とんだ変態じゃねえか」
「種付けしたくてタマラネぇのか!それとも、そのでけえ尻に種付けされてえのかぁ!」
「ゲヒャヒャひゃ!」
固太りな体を懸命に揺らすヒーローに、周りの怪人達がゲラゲラと腹を抱える。
その笑い声も、既に耳に届かない。

燃える心は遠い場所に、ここにあるのは、ただ性の欲求に支配された肉体のみだ。

「はぁ…ハァ…、あ、いぃ、…いいぃいぃ…、おおぉ!」
ぐちょぐちょと、振動に合わせ体を動かす。
スーツの中、最も膨らんだ部分が、一層に硬度と容積を増す。

「あぁぁあ…も、ああ、出る…イく…ハァんん…」
余程堪えていたのだろう。
程なくして、プロテクターは雄の声で喘ぎながら、腰を天高く突き出した。
少しでも快楽をと、もっこりとした部分をぐりぐりと押し付ける。
「ぉおぉお…ぉお、もう…!もう…おあぁ、ダメだぁ!」
涎が飛び散り、体が痺れる。
周りからは、いけいけ、変態め、幸せそうな顔しやがってと、囃し立てる声が大きく響いた。
「…ぃいいぃい!…出るぅう!!!!」
チンポの塔を、どくんと突き上げ。
びゅく、びゅくと、スーツが内側から躍動する。
紫の光が白くテカり、液状のように蠢いた。

それ程に強烈に、ヒーローの精液が迸った。


プロテクトスーツの完璧な防御能力は、意識がなければ働かない。
本来ならば、噴いて出た汗も、吐き出した精液も、全て循環に組み込まれ消える筈だ。しかし、射精と共に、心が完全に緩んでしまったのだろう。壊れかけの精神によって暴走したスーツは、何もかもを垂れ流しにした。
ずっしりとした全身から、どっと汗が滲み出る。
縛られ悦ぶ股間から、精液がぐちょぐちょと染みて出た。


「もういいだろう」

パチン。
どこか遠くで、指の鳴音が聞こえた。
聞こえたと思うと、プロテクターの精神は急速に引き戻された。
「はん、…はっぁ……んぅ、ぐ、あ…」
甘い臭いが止んでいる、そう気が付くのに時間はいらなかった。

「あ…、あ、俺は…」
吐精と共に醒めた心と、臭いから開放された頭で、目で、自分の置かれた状況を思い出す。
そこには、土に塗れて、四肢を異形のもの捕まれ、汗と精液の臭いを撒き散らかし、鞭で股間を擦られて喜ぶ、無様なヒーローという現実が、あった。

「あ、あああ…、俺は…ぁぁあああ!」
その現実に襲われ、プロテクターが力無く叫ぶ。
「おや、もう啼かないのか、あれだけ嬉しそうにしていたではないか」
「う…あ、ぐ、畜…生…!」
男泣きに、涙を流す。粒でなく、流れとなった涙が、四角い顔を垂れていく。
悔しいが、全てを覚えている。
いやらしく腰を振ったのも、気持ちいと感じていたのも、射精をしたのも。

「あんな…あんなのは、俺じゃ…ああ、くそぉ、おおおぉぉお…」
ヒーローは、ただただ声が枯れるまで、弱く叫んだ。




続く
  1. 2010/04/27(火) 03:38:46|
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